ある朝ベランダに出たら、二羽の鳩がじっとこちらを見ていた。そんな経験はありませんか?可愛らしく見える光景かもしれませんが、実はこれ、あなたの家が鳩たちに「ここで子育てしよう」と選ばれている重大なサインなんです。
私の知人も同じような経験をしました。最初は「鳩が遊びに来てるのかな」くらいに思っていたそうですが、数日後には小枝を運んでくる姿を目撃し、慌てて対策を始めたといいます。鳩のつがいが家に来るのには明確な理由があり、放置すれば深刻な被害につながる可能性があるのです。
今回は、なぜ鳩のつがいが特定の家を選ぶのか、そしてどう対処すればいいのかを、専門業者の情報や実際の体験談を交えながら詳しくお伝えしていきます。
鳩のつがいが来るのは偶然ではない、その本当の理由
鳩が二羽で行動している姿を見かけたら、それは単なる散歩ではありません。鳩は一夫一妻制で、生涯同じパートナーと過ごす習性があります。つがいで現れるということは、ほぼ確実に「巣作りの下見」をしているのだと考えてよいでしょう。
彼らは人間のように不動産を見て回っているのです。ここは安全か、雨風をしのげるか、外敵から身を守れるか。そうした条件を慎重にチェックし、合格点をつけた場所だけに何度も訪れます。あなたのベランダや軒下が選ばれたのなら、鳩たちにとってそこは五つ星の物件なのです。
特にベランダや軒下、室外機の裏といった場所は鳩にとって理想的な環境です。なぜなら、これらの場所にはいくつもの好条件が揃っているからです。まず外敵であるカラスやタカから身を隠せる構造になっていること。次に雨風を防げる屋根や壁があること。そして人間の生活圏に近いため、野生の捕食者が近づきにくいこと。
鳩の視点に立って考えてみてください。高層マンションのベランダは見晴らしが良く、危険をいち早く察知できます。一方で手すりや壁に囲まれているため、外敵が侵入しにくい構造になっています。室外機の裏の狭い空間は、まさに鳩が本能的に求める岩場の隙間そのもの。わずか五センチ程度の隙間でも、鳩は器用に巣を作ることができるのです。
これは鳩の祖先が岩場に巣を作っていた習性の名残です。都市環境に適応した鳩たちは、建物の構造物を岩場に見立て、本能のままに巣作りをしようとします。室外機の裏、エアコンの配管周り、ベランダの隅。こうした場所は鳩にとって「完璧な岩場の隙間」なのです。
もう一つ、見逃せない重要なポイントがあります。それはフンの存在です。一度でも鳩がフンをした場所は、その匂いによって「ここは自分の縄張り」というマーキングがされた状態になります。人間には分からない匂いかもしれませんが、鳩にとっては明確な目印。だからこそ、一度フンをされた場所は何度でも狙われることになるのです。
さらに厄介なのが鳩の帰巣本能と学習能力の高さです。鳩は一度「ここは安全だ」と判断した場所を決して忘れません。追い払っても、数時間後、翌日、あるいは数日後にまた戻ってきます。何度追い払われても諦めず、隙を見ては訪れる。その執念深さは、多くの人を悩ませる原因になっています。
鳩被害を放置すると何が起こるのか
「鳩くらい、そのうちいなくなるでしょう」と考えるのは大きな間違いです。鳩被害を甘く見ていると、想像以上に深刻な状況に陥る可能性があります。
まず知っておくべきは、鳩の驚異的な繁殖能力です。鳩は年に六回以上も繁殖できる鳥で、一度巣を作られると次々と卵を産み続けます。放置すれば数が爆発的に増え、気づいたときには手がつけられない状態になっていることも珍しくありません。
健康面でのリスクも無視できません。鳩のフンには様々な病原菌や寄生虫が含まれており、乾燥して舞い上がったフンを吸い込むことで感染症にかかる危険性があります。特に小さなお子さんや高齢者、免疫力の低下している方がいる家庭では深刻な問題です。
建物へのダメージも深刻です。鳩のフンは強い酸性を持っており、放置すると外壁や屋根、ベランダの床を腐食させます。金属部分はサビつき、コンクリートは変色し、最悪の場合は建物の劣化を早める原因になります。マンションやアパートにお住まいの方なら、管理組合から苦情が来る可能性もあるでしょう。
騒音の問題もあります。鳩は早朝から鳴き声を上げ、羽ばたく音も意外と大きいものです。特に巣を作られてヒナが生まれると、鳴き声はさらに激しくなります。静かな朝を鳩の鳴き声で起こされる生活を想像してみてください。
そして最も厄介なのが、法律の問題です。実は鳥獣保護法という法律があり、卵やヒナがいる巣を勝手に撤去することは違法行為になる可能性があります。つまり、巣作りが完了してしまうと、自分で対処することが非常に難しくなるのです。だからこそ、初期段階での対策が何よりも重要になります。
効果的な鳩対策、何から始めればいいのか
では、実際にどう対処すればよいのでしょうか。鳩対策は段階によって取るべき方法が変わってきますが、共通して言えるのは「早ければ早いほど効果的」ということです。
最も重要なのは、巣作り前の初期段階で追い払うこと。つがいで下見に来ている段階なら、まだ本格的な巣作りは始まっていません。この時点で「ここは安全じゃない」「居心地が悪い」と思わせることができれば、鳩は別の場所を探します。
具体的には、鳩を見かけたら積極的に追い払うことです。手を叩く、声を出す、ベランダに出て存在感を示す。こうした行動を繰り返すことで、鳩に「人がよく出入りする場所だ」と認識させることができます。鳩は警戒心が強い鳥なので、人の気配が頻繁にする場所は避ける傾向があります。
ベランダに生活感を出すことも効果的です。洗濯物を干す、植物を置く、定期的に掃除をする。こうした日常的な活動が、鳩にとっては脅威になります。逆に使っていないベランダや、物置として放置している場所は格好の標的になりやすいのです。
物理的に止まれない環境を作ることも重要です。鳩よけネットは最も確実性の高い対策として、専門業者も推奨しています。ベランダ全体を覆うようにネットを張れば、ほぼ百パーセント鳩の侵入を防ぐことができます。見た目が気になるという声もありますが、被害の深刻さを考えれば、最も費用対効果の高い投資と言えるでしょう。
トゲマット、いわゆるスパイクも効果的です。手すりや室外機の上、鳩がよく止まる場所に設置することで、物理的に着地できなくします。鳩は足裏に刺激を感じると、その場所を避けるようになります。
テグスと呼ばれる透明な糸を張る方法もあります。これは鳩が嫌う「不安定さ」を作り出す方法です。鳩は着地する際に足元の安定性を重視するため、糸が張ってあって足場が不安定な場所は避けるようになります。費用も手頃で、見た目もそれほど気にならないため、試しやすい対策の一つです。
忌避剤の使用も選択肢に入ります。匂いで近寄らせないタイプや、足裏がベタつくジェルタイプなど、様々な商品が市販されています。ただし効果は一時的で、定期的に塗り直す必要があります。初期段階の追い払いには有効ですが、すでに執着されている場合は、これだけでは不十分かもしれません。
屋根や軒下の隙間を塞ぐことも忘れてはいけません。特に屋根は鳩が最も好む場所の一つです。隙間があれば金網で塞ぐ、屋根の上にスパイクを設置するなど、侵入経路を物理的に遮断することが大切です。
フンを見つけたら即座に掃除することも重要です。先ほども触れましたが、フンは縄張りのサインです。放置すればするほど、鳩は「ここは自分の場所だ」という認識を強めます。掃除の際は必ずマスクと手袋を着用し、感染症のリスクを避けましょう。水で濡らしてから掃除すると、フンが舞い上がりにくくなります。
実際の体験から学ぶ、鳩対策の現実
千葉市に住む方の体験談を聞きました。ある日、ベランダに毎朝のようにつがいの鳩が来るようになったそうです。最初は「可愛いな」程度に思っていたのですが、数日後に細い枝を運んでいる姿を目撃し、事態の深刻さに気づいたといいます。
よく見ると、室外機の裏に巣を作ろうとしている痕跡がありました。慌ててテグスとスパイクを購入し、すぐに設置。同時に毎日ベランダに出て洗濯物を干すなど、意識的に生活感を出すようにしたそうです。すると一週間ほどで鳩は来なくなり、完全に姿を消したとのこと。「早めに気づいて対処できて本当に良かった」と話していました。
別の事例では、屋根に鳩が住みついてしまったケースがあります。最初は屋根の上で鳴き声がする程度だったのが、次第に天井裏から音が聞こえるようになり、さらにフンの臭いが室内にまで漂ってくるようになったそうです。
自分で対処しようとしましたが、屋根の上は危険で作業が難しく、結局専門業者に依頼することに。業者は屋根の隙間を金網で完全に塞ぎ、既にあった巣を適切に撤去しました。費用はかかりましたが、あれ以来鳩は一切来なくなり、平穏な生活を取り戻せたといいます。「もっと早く業者に相談すればよかった」というのが正直な感想だそうです。
もう一つ、フンを放置した結果、被害が拡大した例もあります。仕事が忙しく、ベランダのフンを掃除する時間がなかなか取れなかったというこの方。気づいたときには、元々来ていた鳩だけでなく、別の鳩まで集まってくるようになっていたそうです。
フンが呼び寄せ効果を発揮してしまい、被害が倍増。慌ててフンを徹底的に掃除し、忌避剤を使用したところ、ようやく鳩は来なくなったといいます。「フンの掃除は面倒だけど、放置すると取り返しのつかないことになる」という教訓を得たそうです。
プロに頼むべきか、自分で対処すべきか
ここまで様々な対策方法をご紹介してきましたが、「結局、自分でやるべきなのか、業者に頼むべきなのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
判断の基準は、鳩の執着度合いと被害の進行状況です。初期段階、つまりまだ下見に来ている程度なら、自分での対処も十分可能です。追い払いと簡易的な防鳥グッズの設置で解決できるケースが多いです。
しかし、すでに巣作りが始まっている、あるいは何度追い払っても戻ってくる場合は、プロの力を借りることを検討した方がよいでしょう。鳩は非常に学習能力が高く、素人の対策では限界があるケースも少なくありません。
専門業者は現場の状況を詳しく調査し、最適な対策を組み合わせて実施します。ネット、スパイク、場合によっては電気ショックを使った忌避装置など、プロならではの技術と道具を駆使して根本的な解決を図ります。
特に屋根や高所での作業が必要な場合、安全面からも業者への依頼をおすすめします。転落事故のリスクを冒してまで自分で対処する必要はありません。費用はかかりますが、確実性と安全性を考えれば、決して高い投資ではないはずです。
知っておきたい鳩の生態と豆知識
鳩について少し知識を深めておくと、対策の理由がより理解しやすくなります。
先ほども触れましたが、鳩は一夫一妻制で、一生同じパートナーと過ごします。つがいで行動するのは、まさに夫婦で未来の子育て場所を探しているからなのです。この習性を知っていれば、つがいで現れた時点で警戒すべきだと判断できます。
繁殖能力の高さも特筆すべき点です。年に六回以上繁殖できるということは、春夏秋冬を問わず、ほぼ常に繁殖期だということです。「今の時期なら大丈夫」という安心は通用しません。一年中、巣作りの可能性があると考えておくべきです。
法律の話も重要です。卵やヒナがいる巣を勝手に撤去すると、鳥獣保護法違反になる可能性があります。これは野生鳥獣を保護するための法律で、たとえ被害を受けていても、許可なく卵やヒナを処分することは法律で禁じられています。だからこそ、巣ができる前の段階での対処が絶対に必要なのです。
室外機の裏のわずか五センチの隙間でも巣を作れるという事実も覚えておきましょう。「こんな狭い場所には来ないだろう」という油断は禁物です。鳩の岩場での習性を考えれば、むしろ狭い隙間の方が好まれることさえあります。
フンの腐食性についても認識を新たにする必要があります。ただ汚いというだけでなく、建物を物理的に傷める力があるのです。放置すれば外壁や屋根の寿命を縮め、結果的に大きな修繕費用が必要になる可能性があります。