鏡を見て、思わず二度見した。
「え、これ...私の肌?」
いつもなら気になる頬のニキビ跡も、目の下のくすみも、なんだか薄くなっている気がする。いや、気のせいじゃない。明らかに肌の質感が違う。まるで、内側から光が漏れ出ているような、そんな不思議な透明感があった。
これは、私の人生が大きく動き始めた頃に起きた、本当の話だ。
当時の私は、28歳。都内の小さな広告代理店で働いていて、毎日終電近くまで残業する日々を送っていた。朝起きて、仕事に行って、疲れて帰って寝る。週末は疲れ果てて一日中寝ている。そんな生活を3年続けていた。
肌の状態も最悪だった。大人ニキビは常にどこかにあるし、目の下にはクマ、肌全体がなんとなくどんよりと曇っている感じ。スキンケアには人並み以上にお金をかけていたけれど、何を使っても焼け石に水だった。
「仕事のストレスだから仕方ない」そう自分に言い聞かせていた。でも、心の奥底では分かっていた。このままじゃダメだって。
転機が訪れたのは、去年の秋のことだった。
会社の大きなプロジェクトが炎上して、私は責任者としてクライアントから激しく叱責された。上司からも詰められ、同僚からは冷たい目で見られ...。その日の夜、帰宅してから初めて、声を上げて泣いた。
涙が止まらなかった。仕事のことだけじゃない。もっと深いところから、何かが溢れ出してくるような感覚だった。「なんで私はこんなに頑張ってるのに報われないんだろう」「なんで私はいつも認めてもらえないんだろう」。そんな言葉が、勝手に口から出てきた。
泣き疲れて、ふと気づいた。この「認めてもらえない」という感覚、ずっと前からあった気がする。小学生の時、妹ばかり褒められて私は「しっかりしてるから大丈夫」と言われたこと。中学の時、頑張って書いた作文が賞を取れず、親に「まあ、あなたらしいわね」と言われたこと。
私は、ずっと「頑張っても報われない自分」を演じ続けていたのかもしれない。
その夜から、何かが変わり始めた。正確に言えば、私が何かを変え始めた。
まず、仕事との向き合い方を変えた。「完璧にやらなきゃ」という呪縛から自分を解放した。できないことはできないと正直に言うようにした。最初は怖かった。でも、思ったより周りの反応は悪くなかった。むしろ「やっと本音を言ってくれた」と言われることもあった。
次に、休日の過ごし方を変えた。疲れて寝るだけじゃなく、本当に自分がしたいことをするようにした。公園を散歩したり、好きな映画を見たり、友達と他愛もない話をしたり。「生産的じゃないことに時間を使うなんて」という罪悪感は最初あったけれど、だんだんそれが薄れていった。
そして、朝起きた時に、小さな習慣を始めた。窓を開けて、深呼吸して、「今日も生きていてありがとう」と心の中でつぶやく。たったそれだけ。でも、その5秒間の習慣が、私の一日を少しだけ明るくしてくれた。
ある朝、いつものように鏡の前に立った時、気づいた。肌が...変わっている。
最初は、寝起きで目が霞んでいるのかと思った。でも、何度見ても、確かに肌の質感が違う。頬のニキビ跡が薄くなっている。目の下のくすみが明るくなっている。肌全体に、なんというか、ツヤというか輝きというか...そういうものが戻ってきている。
不思議だった。スキンケアは変えていない。睡眠時間もそこまで増えていない。食事も特別健康的にしたわけじゃない。なのに、肌が明らかに良くなっている。
友達に会った時、「なんか、雰囲気変わった?」と言われた。別の友達からは「肌綺麗になったね、何か新しいケア始めた?」と聞かれた。母親からは「最近顔色いいわね」と言われた。
自分では意識していなかったけれど、周りから見ても分かるくらい、私は変わっていたらしい。
この不思議な体験を、私なりに理解しようと、いろいろ調べてみた。すると、スピリチュアルな世界では、肌の急な変化は「内面のエネルギーの変化」を表すと言われていることを知った。
スピリチュアル、という言葉に、正直最初は少し抵抗があった。なんだか怪しい感じがして。でも、読んでいくうちに、「ああ、これって私が体験したことと似てるかも」と思えることがたくさんあった。
例えば、「溜め込んだネガティブな感情を手放すと、肌が綺麗になる」という話。私は、あの夜、たくさん泣いて、たくさんの古い感情を吐き出した。その後、確かに何かが軽くなった感じがあった。もしかして、あれが「感情のデトックス」だったのかもしれない。
あるいは、「自分らしく生きることを選択すると、体が応えてくれる」という話。私は、完璧を目指すのをやめて、等身大の自分でいることを選んだ。その選択を、体が「正しいよ」と教えてくれたのかもしれない。
スピリチュアルな考え方では、肌は「内なるエネルギーの窓」なんだという。体の中のエネルギーが滞りなく流れている時、それが肌の輝きとして現れる。逆に、ストレスや不安でエネルギーが滞っていると、肌がくすんだり荒れたりする。
面白いことに、これって科学的にも説明できるらしい。ストレスが減ると、「コルチゾール」というストレスホルモンが減少する。このホルモンが減ると、皮脂の分泌が正常になって、肌のバリア機能が回復するんだって。つまり、スピリチュアルで言う「エネルギーの流れが良くなる」というのは、科学的には「ホルモンバランスが整う」ということなのかもしれない。
また、幸せを感じると、腸内環境が良くなるという研究もあるらしい。腸は「第二の脳」と呼ばれていて、心の状態と密接に関係している。幸せな気持ちになると、腸内で「セロトニン」という幸せホルモンが作られる。このセロトニンが、肌の血流を良くして、細胞の生まれ変わりを促進するんだって。
つまり、スピリチュアルで言う「内面の輝きが外に現れる」というのは、科学的には「ホルモンと腸内環境の改善が肌に反映される」ということ。結局、言い方が違うだけで、同じ現象を説明しているのかもしれない。
私の場合、何が一番大きな要因だったのかは正直分からない。泣いたこと?仕事への向き合い方を変えたこと?朝の感謝の習慣?それとも、全部が複合的に作用したのか。
でも、一つだけ確信していることがある。それは、私が「自分を大切にする」ことを選んだということ。
「頑張らなきゃ価値がない」と思っていた自分に、「そのままで十分だよ」と言ってあげた。「完璧じゃなきゃダメ」と思っていた自分に、「完璧じゃなくていいよ」と許してあげた。「認められなきゃ幸せになれない」と思っていた自分に、「自分で自分を認めてあげよう」と決めた。
その小さな、でも大きな選択の積み重ねが、私の体に、そして肌に現れたんだと思う。
最近、職場の後輩に「先輩、なんか最近キラキラしてますね」と言われた。キラキラ、か。自分ではそんな風に思ったことなかったけど、もしかしたら、本当に内側から何か光っているものがあるのかもしれない。
ちなみに、面白い話を一つ。私の友人で、ずっと肌荒れに悩んでいた子がいた。彼女は「満月の夜にスキンケアをすると肌が綺麗になる」というスピリチュアルな話を信じて、毎月満月の夜だけ特別なケアをしていたらしい。すると、本当に肌が綺麗になったんだって。
最初は「えー、そんなの気のせいでしょ」と思ったけど、よく考えたら、彼女は満月の夜を楽しみにして、ワクワクしながらケアをしていたわけだ。そのポジティブな気持ちが、リラックス効果を生んで、結果的に肌に良い影響を与えた可能性がある。
つまり、満月のパワーなのか、本人の気持ちの変化なのか、それとも両方なのか。どっちでもいいじゃん、結果的に肌が綺麗になったんだから、って彼女は笑っていた。確かにそうだよね。
スピリチュアルか科学か、という二元論で考えるより、両方の視点から自分の体験を理解する方が、豊かで面白いんじゃないかと思う。
肌が急に綺麗になる、という現象。それは、もしかしたら体からの「いい感じだよ」というメッセージなのかもしれない。「今のあなたの生き方、方向性、間違ってないよ」という、体なりのサインなのかもしれない。
もちろん、急な肌の変化が健康上の問題を示すこともあるから、気になる場合は皮膚科に行くのも大事。でも、もし最近何か自分の中で大きな変化があって、それと同時に肌が綺麗になったなら、それは偶然じゃないかもしれない。
私の体験を通して伝えたいのは、肌って本当に正直だということ。私たちの心の状態、生活の質、自分自身との関係性...そういうものが全部、肌に現れる。
だから、高い化粧品を買う前に、自分の心と向き合ってみるのもいいかもしれない。「私、今幸せ?」「私、自分を大切にしてる?」「私、本当にやりたいことをやってる?」。そういう問いかけをしてみる。
もし答えが「ノー」なら、小さなことから変えてみる。朝起きた時に窓を開けて深呼吸する、好きな音楽を聴く、友達と笑う、自然の中を歩く。そんな小さなことでいい。
肌は、私たちの内側で起こっている全てを映し出す鏡だ。スピリチュアルな言葉を借りれば「魂の窓」であり、科学的な言葉を使えば「心身の健康のバロメーター」。どちらの言葉を使っても、本質は同じなんだと思う。
あれから1年が経った今、私の肌は安定して綺麗な状態を保っている。もちろん、たまに疲れた時は少し荒れることもある。でもそれは、「ちょっと休んだ方がいいよ」という体からのメッセージだと受け取るようにしている。
肌が綺麗になったことで、自信がついた。写真を撮られるのが怖くなくなった。鏡を見るのが楽しくなった。でも、一番大きな変化は、自分を大切にすることの重要性を、体を通して学べたことかもしれない。
もしあなたが今、鏡を見て「最近肌の調子がいいな」と感じているなら、それはあなたの人生が良い方向に動いているサインかもしれない。その変化を喜んで、何があなたを今の状態に導いたのか、少し振り返ってみてほしい。
逆に、肌の調子が悪いなと感じているなら、それは「何かを変える時期だよ」というメッセージかもしれない。無理してない?自分を犠牲にしてない?本当の自分を押し殺してない?そんな問いかけをしてみてほしい。
肌は、私たちに嘘をつかない。内側で起こっている全てを、正直に映し出してくれる。だから、肌の変化に敏感になることは、自分自身に敏感になることでもある。
スピリチュアルな視点も、科学的な視点も、どちらも私たちが自分自身をより深く理解するための道具だ。どちらかが正しくてどちらかが間違っているわけじゃない。両方の視点を持つことで、より豊かに、より深く、自分という存在を理解できるんだと思う。
次に鏡を見た時、ただ肌の状態をチェックするだけじゃなく、「今の私は、どんな状態?」と自分に問いかけてみてほしい。肌は、あなたに何かを伝えようとしているかもしれない。