今日は、大切な日をどう選ぶか、というお話です。
人生には、いくつかの「節目」と呼ばれる瞬間があります。たとえば、結婚、引っ越し、新しい仕事のスタート、開業、そして時には財布を新調する、という些細な決断すら、人生の流れを少しずつ変えていくような気がしませんか?
そんなとき、ふと目に留まるのが、カレンダーに小さく書かれた「大安」や「天赦日」といった文字たち。昔の人々が紡いできた「吉日」の知恵が、今でも私たちの心に静かに息づいています。
でも、そもそも「吉日」って何でしょう?なぜそれが人生に影響するとされているのでしょうか?そして、現代に生きる私たちにとって、それは単なる迷信なのか、それとも背中を押してくれる確かな“サイン”なのか…。
今回は、そんな「カレンダー吉日」の世界を、少しだけ覗いてみましょう。
まず、カレンダー吉日とは、簡単に言えば「縁起が良い」とされる日のことです。日本では古くから、暦に特別な意味を持たせる文化があり、たとえば「大安に結婚すれば幸せになれる」「一粒万倍日に財布を買えばお金が貯まる」といった言い伝えが受け継がれてきました。
代表的なものとしては、「六曜(ろくよう)」「選日(せんじつ)」「十二直(じゅうにちょく)」「二十八宿(にじゅうはっしゅく)」などがありますが、特に有名なのは六曜と選日でしょう。
六曜には、大安、友引、先勝、先負、仏滅、赤口という6つの運勢があります。中でも「大安」は文字通り「大いに安し」、つまり“何をするにも最適な日”とされ、結婚式や契約、納車など、あらゆるイベントで人気の高い日です。
また、「友引」は「友を引く」という意味から、幸せや喜びを周囲に分け与える日とも言われ、結婚式や開業の日取りとしてもよく選ばれます。ただし、葬儀に関しては「友を冥途に引く」という迷信があるため避けられることが多いですね。
一方、選日には、より限定的で特別な日が含まれます。
たとえば「天赦日(てんしゃにち)」という日は、「天が万物を赦す」日とされ、年に数回しか訪れません。あらゆることに挑戦しても、障害が少なく、物事がうまく進むと言われるまさに“最強の吉日”です。
さらに、「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」という日もあります。「一粒の種が万倍に実る」という意味で、小さな行動が大きな成果に繋がる日です。お金に関すること、たとえば財布の購入や貯金の開始、ビジネスのスタートなどには特に縁起が良いとされています。
こんなふうに書くと、「本当にそんなことで運命が変わるの?」と思う人もいるかもしれません。確かに、科学的な根拠はありません。けれども、私たちは目に見えないものに背中を押されたくなる瞬間が、人生には何度も訪れるのです。
実際、ある女性は、どうしても「大安の日に結婚式を挙げたい」と考えました。しかし、大安は人気が高く、式場の予約は争奪戦。「一年先でも空いてない!」という状況でしたが、根気よくキャンセル待ちを続け、ようやく手に入れたその日。見事に晴れ渡った空の下での式は、本人だけでなく、家族や友人の心にも長く残る素晴らしい思い出になったそうです。
また、別の男性は、妻のすすめで「一粒万倍日+寅の日」にカフェを開業しました。それまではあまり運勢を信じるタイプではなかった彼ですが、開店初日から予想以上の集客。「やっぱり縁起って、あるのかもしれない」と感じたそうです。今では、その日を「原点の日」として、毎年イベントを開いているといいます。
さらには、学生の男性が「天赦日に財布を買い替えたら、バイトのシフトが増えた」というエピソードも。たまたまといえばそれまでですが、「自分にとって特別な日」として意識したことで、行動も前向きになり、結果的に流れが変わっていったのかもしれません。
ここでひとつ、面白い豆知識を。
六曜の起源は中国の陰陽五行説にありますが、実は日本には鎌倉時代に伝わり、武士たちが出陣の日を決めるために使っていたとも言われています。そして江戸時代になると庶民にも広まり、今のようにカレンダーに「大安」などと印刷されるようになったのは、明治以降のことです。
また、寅の日が「金運に良い」とされるのは、虎が「千里を行って千里を帰る」と言われることから。つまり、出したお金が戻ってくる、という意味で財布の購入や宝くじの購入日として人気があるのです。
ちなみに、カレンダー吉日を活用するうえで注意したいのが、吉日と凶日が重なる場合です。たとえば、「大安」でも「不成就日(ふじょうじゅび)」や「三隣亡(さんりんぼう)」などの凶日と重なると、その効果が薄れるとされます。暦の奥深さがここにも表れていますね。
とはいえ、すべてを完璧に守るのは現代ではなかなか難しいもの。だからこそ、「目的に応じて組み合わせる」「大事にしたい意味を優先する」など、柔軟な姿勢で取り入れるのが今の時代には合っているのかもしれません。
たとえば、結婚なら「大安+天赦日」、開業なら「一粒万倍日+寅の日」、新しいことを始めるなら「天一天上」など。自分自身の意志と重ねながら、カレンダーと向き合ってみると、見えてくるものがあるはずです。
最後に、こうした吉日にはもう一つの効用があります。
それは、「心を整えるきっかけになる」ということです。人生の大事な場面で、「今日は特別な日だから」と思うことで、自分の心に静かな決意が生まれる。たとえば、新しい名刺を配るとき、財布を手にしたとき、あるいは大切な人に想いを伝えるとき。その行動に意味を持たせてくれるのが、吉日という存在なのです。
結局のところ、吉日とは、自分を信じるための“象徴”なのかもしれません。
自分の選んだ日、自分の選んだ道を「きっと良い方向に行く」と思える気持ち。それこそが、人生を豊かにする一番の“運”なのではないでしょうか。
さて、次にカレンダーをめくったとき、どんな日があなたを待っているでしょう?
もしかすると、それがあなたの人生の転機になるかもしれません。
だからこそ、ほんの少しだけ、カレンダーの「小さな文字」に目を向けてみませんか?そこには、あなたの未来にそっと寄り添うような、優しいヒントが隠れているかもしれません。